裁量トレードを希望する方は一定数いますが、実際には多くの人が失敗しています。
その理由は、FXが持つギャンブル性と深く関係しています。
人間は一度大きな利益を得ると、その報酬が脳に強く刻まれ、再び同じ報酬を求めるようになります。これは、生存のために食べ物を求めた原始時代の名残であり、人間の本能に根ざした性質です。
しかし、なぜ多くの人が裁量トレードで負けてしまうのかというと、脳は「負け」よりも「勝ち」の記憶を優先する傾向があるからです。たとえ裁量トレードで全体的に損失が出ていたとしても、含み益や短期的に勝利した経験が脳内で強調され、その結果、ほぼ負けが確定している状況でもトレードを続けてしまいます。以下のグラフのように、下降トレンドであっても、一時的な反発の記憶だけが強く残るため、脳は現実よりもポジティブに物事を捉えてしまうのです。
ポイント
・ドーパミンという神経伝達物質が快感を感じた時にそれを繰り返すようになっているため、裁量トレードは依存性、危険性が高い
・ポジティブバイアスによって負けていても楽観的に捉えてしまう
→客観的にどう見ても別れた方が良いのに別れられない恋愛感情のように
どう考えても辞めた方が良い優位性や根拠に欠けるトレードを続けてしまうリスクがある
裁量トレードで出せる勝率は良くて50~60%
裁量トレードでどんなに頑張っても、多くの人が達成できる勝率は良くて50〜60%程度です。長期間になるとさらに勝率は落ちていきます。負けている人の勝率は50%を切ることが多く、つまりコイントスのような2分の1の確率さえ下回っているということです。私たちは機械ではないため、正しい判断を長期間にわたって一貫して行うことは非常に難しいです。これを上回る勝率を求めるのであれば、EA(自動売買)を使う方が再現性が圧倒的に高くなります。
もちろん、裁量トレードでも勝率を上げる方法やプラス収支に持っていく手段は存在しますが、手動でこれを達成するのは非常に高い難易度を伴います。そして、その方法は多くの人にとって現実的ではなく、実行できるのは1000人に1人ほどの逸材だけです。相場は24時間止めどなく動きますが、人間は24時間動き続ける事は困難ですからね。それほど難易度が高く、ほとんどの人が途中で退場してしまいます。
損切りは大切の罠
損切りが大切と初心者に教える人が多いのですが、これは多くの場合、資金を減らしてしまう要因になり多くの被害者を生んでしまいます。なぜなら、FXにおいて大切なのは証拠金だからです。その証拠金を減らしてしまうという行為は、次のトレードで、「より勝ちにくくなる」という事でもあるからです。
FXでは証拠金維持率という概念があり、その中の範囲だけ含み損が出てもポジションを保つ事ができます。逆に強制ロスカット率を下回ってしまえば、そこで終わりです。損切りをすれば短期的に大きな損失を避ける事が出来ますが、長期的にそれをプラスに持っていくのは至難の業です。
これはナンピンを行うEAのバックテストと損切りを行うEAのバックテストを比べれば一目瞭然です。EAであればまだ機械的にエントリーを行えるので、損切りがあったとしても長期的にプラスにすることが可能ですが、これを裁量でやろうとすると、相当大変な事になります。
損切りなしの場合
損切りありの場合
自動売買だけを行うべき理由
裁量トレードでは高い勝率も出せず、感情や判断ミスによって結果が大きく左右されます。また、人間が裁量でトレードを行う場合、一度負けた後にその負けを取り返そうと過度なリスクを取ってしまう傾向があり、これによりトレードの一貫性が失われます。やけになって過大なロットでトレードをしたり、もうどうにでもなれとギャンブル的なトレードをしてしまうリスク、過剰に入金を繰り返し借金をしてトレードという人も中にはいます。
一方、自動売買(EA)は、感情に左右されず、統計的に裏付けられた戦略を一貫して実行することができるため、再現性が高く、安定した利益を追求することが可能です。裁量トレードは人間の判断力の限界に依存するため、多くの人が失敗し、途中で退場するリスクが高いのに対し、EAは市場の変動に対して機械的に対応し、長期的に利益を得る可能性を高めます。
裁量トレードでギャンブル依存に陥っている人を救うためのアドバイス
- 依存の認識とサポートの利用: まず、自分がギャンブル依存に陥っていることを認識することが重要です。そのために、過去の成績をしっかりと確認し、もし長期間成果が出ていない場合は、今後も同じようなトレードを繰り返し、失敗する可能性が高いと判断できます。もし依存していて精神や体調に支障がある場合は、カウンセリングを受けるなどのサポートを求めることも一つの手ですし、サポートを受けたくない場合でも、自分を見つめ直す機会を作り、改善策を考えていく必要があります。
- 感情を排除する仕組みづくり: 裁量トレードで失敗する原因の一つは、感情に左右されることです。自動売買を利用することで感情的な判断を排除し、冷静な取引を続けることができます。口座を複数に分け、自動売買用の口座を使うなど、感情的な決断を避けるための仕組みを作りましょう。
- 小さな目標設定と成功体験の積み重ね: 小さな目標を設定し、それを達成することで自信を持ち、少しずつ裁量トレードから自動売買へシフトしていくことが重要です。最初は少額の資金で自動売買を試し、成功体験を積み重ねることで、依存から徐々に抜け出すことができます。どうしてもやめられない場合は、自動売買と並行して裁量トレードを行い、裁量トレードの資金は少額で行うというのがおすすめです。
- 定期的な休息と自己評価: 定期的にトレードから離れて自分を振り返る時間を持つことも効果的です。この時間を利用して、これまでの成果や失敗を冷静に評価し、長期的な戦略を再確認しましょう。
自動売買で利益が出た場合の資金管理方法
- 利益の一部を出金する: 利益が出た際は、まずその一部を出金して確保します。例えば、利益の50%を出金し、残りの50%を運用資金として残すとよいでしょう。これにより、利益を確実に手元に残しつつ、運用資金を増やすことができます。
- 自動売買への資金配分を増やす: 残した利益を再投入して自動売買の資金として配分します。増えた資金でポジションサイズを適度に拡大し、取引量を増やすことで、利益が増える可能性が高まります。ただし、リスクが過剰にならないように慎重に調整してください。
- 複数の戦略に分散投資: 増やした資金を複数の自動売買戦略に分散投資することで、リスクをさらに分散し、安定した成果を追求できます。異なる市場状況に対応する戦略を組み合わせることで、全体のパフォーマンスを向上させることが可能です。